かつて日本にいた 意外な特権階級
2017/05/05
今や、郵便局も民営化されて 10年ほど経った。
そして、当時の特権階級だった人々も、おそらくかなりの数の方々が
すでにあの世住まいになられた、と思うので、時効と解釈して、
お話ししよう。
特権階級とは、特定局長だ。
明治時代、開国の後、日本にも近代郵便制度を、と
現在につながる郵便制度を始めたのは、
前島密(まえじま ひそか)である。
今も、1円切手の肖像画になっている、あのお方だ。
で、この前島密が、郵便制度を日本に導入する際、当時の名主、
今でいう その土地の地主の中でも、代表的な名士の家の軒先を借りた、というのが始まりだった。
つまり、当時の盟主の家を 郵便局にしたのが、現在も全国にある特定局だ。
今でも、特定局長会が 選挙の時は、集票マシーンといわれるのは、こういう背景があるからである。
このような歴史的背景があるので、特定局長というのは、国家公務員の中でも、特別な地位であった。
公務員なのに 世襲制、それも一般公開の採用試験とは、まったく別枠の人事システムだった。
他の公務員は、人事院が 人事を担っていたのだが、特定局長は、
一般公務員はもちろん、通常の 郵政職員採用試験や 昇給試験とは、別制度になっていた
特定局長は、自分が引退する時に、息子に世襲させることができたし、人事院も認めていた。
人事院より、伝統があったのだから、年功序列、上意下達の日本社会らしい、といえば、そんな制度だったのだ。
息子でなく、娘の場合は、娘のダンナの意思を聞いた。
相続じゃないけど、順番に 尋ねていき、いよいよいない、となって、
初めて、ふつうの職員採用試験に合格して、職員になっている、たたき上げの職員が、
ようやく特定局長になるチャンスが来る、というものだった。
謎の特権階級だった 特定局長。
現場の仕事は、総務主任に仕切らせ、平日の昼間から、出張と名をうって、あそびまわる、
なんてことは、けっこうできたのだ
もちろん、給料は、国家公務員として、しっかりもらえた。
特定局長は、専用の俸給表があって、その金額だった。
公務員というのは、国家や地方自治体から 給料をもらうものだが、中には、
ダブル取り、トリプル取りというパターンもあった。
実は、特定局は 自宅家屋を 郵政省に貸し出す、という いわゆる 一種の不動産業でもあり、
民間の商業物件よりは、(一応、公的予算から出すので)家賃は安くはなるが、相手は郵政省という国家。
不払いや 踏み倒しのない、善良な借主だから、自分の家を郵便局にして 郵政省に貸出し、家賃収入を得られたのだ。
(ちなみに、郵政会計では「局舎使用料」という項目だった)
局長としての 公務員の給料と、局舎使用料が入る、ダブル取りもおいしいが、
もっとおいしかったのが、奥さんも 郵便局員になってくれていれば、いずれ主任になる。
奥さんの給料も 郵政省から入ることになるから、トリプル取りができたのである。
日本国が 国家破たんしない限り、この構造で、安定収入だったわけだ。
さらには、局長は 法的に運営可能な範囲なら、自由度がきいたから、
平日の昼間から、ゴルフに温泉、麻雀三昧、なんて人も 意外といたのだ。
(私が最初に配属された局が、まさにそうだった)
もちろん、立場上、あまり派手な行動で、目立つことは、謹んでいただろうが、
しっかりと、そういう局長様方の たまり場みたいなお店も、当然、あった
国民が知らないところで、いろいろとお金が使われているのは、郵便局に限らないことではあるが、
これは 元職員の私としても、優遇しすぎだったと感じる。
郵便局員の名誉のために、一応、お断りしておこう。
郵便局は、郵政省時代から、
「自分の飯代は自分で稼げ」
というのが基本だったので、
郵政省の職員は、公務員にしては珍しく、国民の税金で食っているわけではなかったのだ。
自分たちで 事業収入を得て、運営していたのである。
もちろん、国鉄の赤字同様、赤字になっても運営はされていたのだから、その損失補てんはされてたはずだろうが、
国家公務員の中でも 給料が安いことで有名だったのは、
もしかしたら、特定局長に配分がいっていたからでは?
と 私は推測している。
国民に対して、威張っている どこかの大臣やら 他の公務員らが、本来 おかしいのであり、
郵便局員が 税金で食っているくせに偉そうに、といわれるのは、筋違いだった。
とはいえ、特定局長は、その中での 特権階級なわけだ。
特定局長に限らず、国民が気づかない、知らないところで、
まだまだ こんな特権階級的な立場の人々が たくさん 税金でメシ食っているのだ。
国家破産だ、財政窮乏だ、という前に、このあたり、もっともっと 見直すべきなのだ。
正直者がばかを見る
その構造を、「悪法も法なり」と、放置している国民自体が、
自分たちの首を自分たちで絞めていることに、気づかなければ、
日本も 右肩下がりの衰退国家のままになってしまう。
それだけは、確かだ。